第20話

燈馬は優芽にどう伝えれば良いか悩んでいた。

優芽が何を隠しているのか聞きたいのに。


「優芽さん。僕は優芽さんに幸せになって欲しいと思ってるよ。


人の為じゃなく優芽さん自身が幸せになるように、僕が出来る事があれば良いけど。」


「私は大丈夫です。もうすぐ新しい事を始める為に旅立つ予定なんです。


だから心配しないで下さい。燈馬さんも自分の幸せを大切にして下さい。」


「そう。いつ帰って来るの?寂しくなるね。

哉芽君は知っているの?」


「兄には明日話します。期間は決めてませんが、暫く留守にする予定です。」


優芽は心の中で呟いていた。


(もう会えません。さようなら燈馬さん)


優芽の家に着いた時、燈馬は優芽を抱きしめた。


「優芽さん、本当に決めてしまったの?もし僕が行かないで欲しいって言ったら、優芽さんは僕の傍にいてくれる?」


優芽は驚いて拒む事もできないでいた。暖かい腕の中にずっと居たいと思ってしまった。


「燈馬さん。なぜ引き止めるのですか?私を心配してくれているのなら大丈夫ですよ。」


「心配じゃ無いよ。大切な人を失いたくないから。僕は優芽さんが好きだよ。


だからわかるんだ。優芽さんが何か大切な事を

1人で決めてしまっている事を。


お願い。僕にだけは教えて欲しい。優芽さんがどんな決断をしても、僕が味方になるから。」


優芽の涙が溢れる。嬉しいのか苦しいのかわからない。


「私を苦しめないで下さい。お願い。」


「何があったの?1人で抱えないで。僕にも背負わせて欲しい。お願いだから。」


「燈馬さんにそんな事を言って貰える資格は無いんです。これは私のわがままなんです。」


優芽は燈馬の腕から離れようとした。このままだと全て話してしまいそうになる。

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