第11話

優芽は信じたくなかった。


「私と兄さんが他人だなんて。本当にそんな事が?私は家元を継ぐ資格すらないの?


だとしたら、私はなんの為に産まれてきたのですか。お母様の玩具になる為に?」


涙が溢れて止まらない。このまま消えてなくなりたい。


あの人は優芽の肩を擦りながら呟いた。


「君ばかり辛い思いをさせて、本当に申し訳ない。でもこれだけは信じて欲しい。


僕は君の父親だ。君が産まれてくれて、本当に嬉しかった。


だから君には幸せになって欲しい。これ以上苦しむ姿は見たくない。


紫耀さんはもう居ない。哉芽君も幸せを見つけた。優芽も全てを忘れていいんだよ。」


あの人は優芽を愛おしそうに抱きしめた。

初めて父親なんだと感じる事ができた。


「お父さんありがとう。ずっと苦しかったのはお父さんも同じです。


全てはお母様の狂気が産んだ事だけど、私は

紫雲家の娘としてお父様や兄さんと出会えて幸せでした。


たとえ玩具でも、紫雲家の為にこれからも生きていきます。」

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