NO.4

第10話

気がついたら稽古場に来ていた。

遺影を見つめながら涙が止まらない。


あの人が優芽に伝えたのは真実なのか。

まだ信じられない。


あの人は苦しそうだった。


「実は哉芽君が高校に入る前に入院して検査したことがあるんだ。


咲来の指示でその時に子供が出来ないように処置をしている。そこまでは知っていたけど。


最近、哉芽君が後で子供を作れるように冷凍保存してあると言い出したんだ。」


優芽は驚いた。


「いくらなんでもそんな事。兄さんは知ってるんですか?」


「わからない。哉芽君が知っているかは咲来は言わなかった。その話も重要だけど、君に伝えたかったのは別にある。」


あの人は呟くように話はじめた。


「咲来は君を妊娠する時に体外受精をしたんだ。僕が提供して咲来との子供を作ったと信じていた。


でも咲来は自分は産んだだけ。卵子は他の女性のものだと言い出した。


もうすぐ優芽に哉芽の子供を産ませるから、優芽に体外受精をさせるんだと言っている。」


あの人は青ざめていた。


「虚言かもしれない。でも咲来ならやっていても不思議じゃない。


咲来の紫耀さんや哉芽君への執着はそれぐらい

激しいものだから。


君は僕と誰か知らない女性の子供かもしれない。哉芽君とは血は繋がっていないなら、


これ以上君が紫雲家の為に苦労する必要がないんだよ。」

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