【短編】幼馴染と腐れ縁

のんびりした緑

第1話

安藤理沙

以下、理沙と呼ぶとする。理沙とは小学生以来から関係のある幼馴染だ

俺は理沙の事が好きだが、どうしても素直になれず、つい意地悪な事をしてしまう

だがそれとは別に気に食わない事がある

佐々木拓海って野郎の存在だ

佐々木は理沙と幼稚園からの関係がある、理沙からして佐々木とも幼馴染だ

俺より先に会ってるとはなんて生意気だ

しかも俺が理沙と関わろうとする時、佐々木がいると決まって邪魔してくる

男の嫉妬心は醜い物だなってこの時思った


中学の時も俺が理沙と接触しようとすると佐々木が邪魔してくる

この頃になるともはや攻撃対象だ。

友人達と一緒に佐々木を弄る事にした

だが佐々木が理沙に泣きつく可能性があるからな。

俺たちがしてる事がバレたらマズい。

なので一線を超えないよう、掃除を押し付けたり委員を押し付けるのに留めた


高校生になった時、理沙は中学の頃より、更に可愛くなっていた

理想的なスレンダー体型

長髪の黒髪

整った顔

大和なでしこと言うに相応しい姿になっており

すぐにクラスのアイドルになった。


と言っても理沙と俺の関係は高校生になっても変わらない。そう思っていた。

だが最近佐々木の野郎が理沙と接近してるのを理沙の友人から知った

理沙は優しい奴だ。

俺が意地悪しても笑って流してるくらいには優しい

頼まれ事をされても嫌な顔もせず、笑顔で引き受ける姿も見てる

だから佐々木の野郎から告白されたら、その優しさから付き合うかもしれない

そんなのは嫌だ。絶対嫌だ

だから理沙の優しさに漬け込むのは卑怯かもしれないが、恋愛は早い者勝ち

アイツより先に告白して恋人関係になってやる

そしてアツアツの関係を見せつけて隙なんて無いって思わせてやる

なので放課後に校舎裏で待ってもらうよう頼んだ


「来てくれたか理沙」

「・・・なんの用?」

校舎裏に呼び出したからか、警戒されてる。

普段意地悪な事してたからな、仕方ないか

だがそれもこの告白によって全てが180°変わる

「えっと・・・今まで散々意地悪な事してたけどさ」

「そうね。ホントたくさんしてくれたわね」

ジト目にしてこちらを見てくる理沙

負い目を感じつつも、そのジト目も可愛いなと思いながらも

緊張しながらも俺は告白の言葉を口にしていく

「ホントはお前の事が好きなんだ!」

「・・・え」

思いを言葉にした内容に、予想してなかったのか呆けてるな理沙の奴

だがこのまま畳みかける!

「お、俺と付き合ってくれ!」

最敬礼しながら握手を求めるように手を出す

「・・・ふふ」

理沙が笑ってる。この告白、上手く行く!

「なんで私が貴方の恋人にならなきゃいけないの?」

「・・・え」

予想とは違う言葉が帰ってきた事に驚き、思わず顔を上げる

そこに映った理沙の表情は笑顔でも無表情でも無く


侮蔑の表情だった


「小学生の頃、スカート捲りでパンツを大衆に見せられる羞恥を味わされて?」

「中学生の頃、可愛くない、ブスだと、友達と言って?」

「今までの学生生活で虫は苦手と言ってるのに止めずに見せつけにきて?」


全部俺がやった事だ。素直になれずに行動した、俺の・・・

「わ、悪かった。もうしない。だからー」

「もう一つ、私個人で一番苛立つことなのよ」

「な、なんだ!?絶対直す!言ってくれ」

俺は他に何をやらかした。その内容を聞き逃さないように集中する

直さなければ、この状態。絶対付き合えない


「貴方と私が幼馴染で付き合いがあるって周りに言いふらしてる事よ」


「・・・いや小学生からの付き合いがあるから、幼馴染だろ」

幼稚園からの付き合いじゃないと幼馴染とは言えないって感じか?

「貴方と私の関係は幼馴染じゃ無いわ」

「じゃあなんだよ」

不貞腐れながら言ってるのは自分でも分かってる

だがどこかでこう思ってる

恋人になれたのが嬉しいと恥ずかしいが入り混じってると


「腐れ縁って言うのよ」

腐れ縁?それって確か切っても切れない縁だ

なんだ、幼馴染よりも良いんじゃー

「都合の良いように解釈されないよう言っておくわ」


「好ましくない縁。切りたい縁なのよ貴方とは」


「・・・!?」

「ふふ、やっと今までの仕返しが出来たみたいね。と言っても一つだけだけど」

俺を嘲笑うように言う理沙。違う。俺が知ってる理沙はもっと優しくて

頼りがいのある女だ。人を蔑むような人じゃない

コイツは、誰だ?

「てめぇ、安藤理沙じゃねな?安藤理沙をどこにやった!」

「現実逃避しないで欲しいわね。貴方が探してる安藤理沙は私よ?」

「安藤理沙は優しくて頼りがいのあるー」

「それは貴方が見た上っ面の私。第一」


「私に嫌がらせする人に、なんで優しくしないといけないのかしら?」


「あっ・・・」

「貴方は最初から玉砕が決定していたのよ。来る気も無かった。

 でも振った時どういう表情をするのか知りたくてココに来たのよ」


なんつー悪女だ、これが俺が恋した女か?

なんでこんな奴を好きになったんだ!

もういい、後先考えねぇ。ここは人通りが少ない場所だ

コイツを無茶苦茶にー


「私に対して逆恨みってとこかしら?でも良い事を教えて上げる」

「な、なんだ!」

はっ!命乞いってか?それとも今までのは嘘ッてか?言ってみろや!


「今ここで貴方が私に乱暴しようが私の初めてにはなれないって事よ」


「・・・は?」

何をしても初めてにはなれない・・・

それはつまり、俺以外の誰かに貞操を捧げたって事か・・・?

いや、いつ、どこで、誰と!?

ま、まさか・・・!?

「・・・いいわねその絶望した表情。更に良い事を教えて上げる」

「・・・!?や、やめろ。聞きたくない!言うな!言わないでくれ!」

聞いたらダメだ。俺の頭が警鐘を鳴らしてる

聞いてしまったら戻れなくなる!

「私が止めてって言ったのに止めなかったのはどこの人だったかしら?」

「ホントに悪かった!もうしない!二度と関わらない!だからやめてくれ!」

もはや恥とかそんなのどうでもいい。

地面に転がるように伏せ、耳を手で思いっきり塞ぐ

だというのに何故か無常にもその声が聞こえた


「初めての相手は幼馴染の佐々木拓海君よ」


「あ、あぁ・・・」

「ふふ、貴方への復讐はこれで全て終わりにしてあげる。優しいでしょ?」

俺はもう○○の声が聞こえない

俺は、アイツに、佐々木の野郎に既に負けてたっていうのか・・・?

○○が遠ざかっていく。だが追いかける気力が無い。

地面に這いつくばってたら制服が汚れてしまう。

だというのに起き上がれない

だがこれだけは分かる


俺の初恋が、無様に散ったのを嫌でも思い知らされた


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「ふふ、気が付いてないでしょうね」

そう言いながら、あの絶望した姿を思い出し

思わずまた笑みを浮かべてしまう

「私が貴方の名前を一度も呼んでない事に」

名前すら呼びたくないのよ貴方とは

そして最愛の人である拓海君の元へ向かう。

アイツが何かしようにも、実は近くで見守ってくれていた拓海君がいたのよね

だからああやって強気でいられたのよ

「もういいのかい?」

「ええ、気が済んだわ」

「じゃあ行こうか」

「うん!行こう拓海君」

そう言って私は拓海君の腕を胸に押し付ける様に絡み取る

「ちょっと理沙、胸が当たって・・・」

「当ててるの。それに今更でしょう?」

「そりゃ、そうだけどさ・・・」

ふふ、可愛い拓海君。これからもよろしくね?



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【短編】幼馴染と腐れ縁 のんびりした緑 @okirakuyomu

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