第64話

「元々、無くしてなかったわよ。

ちゃんと撮影の合間はポーチに入れてた…」


「そうですか」


「何か他にないの!?

もっと怒りなさいよ!!


なんであんたみたいな子が…」


あ、この人。本当に玲央の事好きなんだろうな。


「ひとつだけ良いですか?」


「何?」


ベットから降りて、百崎さんのところに行く。


「…」


百崎さんの額にデコピンをする。


「いった! え?は?」


「…本当は引っぱたきたい所ですけど、女優さんだし、頬は避けました。」


「は?額も顔の1部ですけど!?」


「痛い」と言いながら額をさする彼女。


「百崎さんの気持ちはよく分かりました。

だけど、そんな事して人の気持ちを手に入れて嬉しいんですか?」


百崎さんは、黙って頭を下げて部屋から出ていく。


「はぁー…やってしまった」


その場に座り込む。


「菜穂ちん、大丈夫?」


亜夢にぎゅっと抱きしめられる。


「うん、大丈夫」

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