第61話

振り返ると、百崎さんが立っていた。


「も、百崎さん」


「菜穂ちゃんだっけ?ちょっとお願いがあるんだけどー」


「何ですか?」


「そんなに怖がらないでよー!」


ビクッとする私を嘲笑う。


「私、さっきまでしてた指輪どっかに落としちゃったみたいで一緒に探してくれない?」


「指輪?」


「ママに誕生日プレゼントで貰った大切な物なの」


大切な物…。

困ってるなら


「わかりました」


「ありがとー!!じゃあ、あっちのボート乗り場の方とか奥の方見てきてくれる?私はここら辺探すから」


「はい…」


バナナボート等が乗れる場所へ向かう。


その際も落ちてないか足元を見るが見つからない。


乗り場の近くで話を聞いても見つからず、元々つけてなかったのでは?とか思い始めてしまった。


離れた、人目のつかない水の深い場所に行くが、見つからない。


「菜穂ちゃん、あったー?」


「百崎さん、見当たらないですね」


「そっかー…」


ドンッと百崎さんに押され、簡易的なボートに落とされる。


「も、百崎さん?」


「じゃーま」


波の速さで勢いよく沖から離される。


櫂が無いから自力で漕ぐにしても、この深さと速さで追いつかない。


降りて泳ぐか、私…泳げないんだった。

どうしよう。

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