第9話

それをしないのは、何故だろう。



の前に、私の手を掴む手が驚く程に優しい。



さっき腕を引かれた時と比べ物にならないほど、今掴まれてる手が優しい。



まるで壊れ物にでも触れられてるようだ。



「ちょっと染みるかも、」



牧野 竜雅はそのまま傷口に消毒液を垂らす。



「ごめん。沁みる…?」



『別に』



何も感じない。



「そっか。ならよかった」



軽く微笑むと、コットンで指に付いた消毒液を拭い、絆創膏を貼りつけた。



「よし。いいよ」



そう言って、消毒液などを片付ける牧野竜雅の声を聞きながら絆創膏がついている指先を見つめる。



人に手当してもらったの、いつぶりだろうな。

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