第76話

 驚いて何も言わない私に彼は、言葉を続ける。




「……それと、アイツ――陽は、まだお前の事が好きなんだよ。毎日毎日…、“俺は別れると認めてねぇ。藍は一生俺の女”ってな。」




 

 ……っ、




 だんだん、目の前がボヤケてくる…。




 そして頬に何かが伝った。




 それが“涙”だと分かり、腕でゴシゴシと涙を拭う。




 ……が、







 涙が止まらなかった。




 何度も何度も頬に涙が伝っていく…。




 あの日からもう泣かないって決めてたのに…、




 涙を引っ込めようと努力するが、なかなか止まらない。




 陽は優しすぎるよ…




 本当に優しすぎる…




 自分が危険な状態になったのに、




 その原因が彼女の私なのに……、




 普通はもう嫌いになるでしょう…?




 いや、恨むのかもしれない。




 なのに…






 陽は、まだ私のことを“好き”と言ってくれた。




 凄く嬉しいよ。陽――――……

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