第77話

「そんなに泣くならおまえも陽の事が“まだ”好きなんだろ?」


さっきまで涙を流す私をただただ黙って見ていた彼が“まだ”を強調しながらそう聞いてきた。


もう一度、腕で涙を拭い彼を見据える。


『……好きだよ』


正直に自分の気持ちを伝えた。


まだ陽の事好き、大好きだよ。


大好きに決まってるじゃん


「じゃあまたヨリ戻せよ」


『それは出来ない』


そんなあっさり言わないでよ


「は?どういう意味だよ」


即答した私にさっきと違う鋭い眼差しでそう聞き返してきた。


『……谷口慎弥は、陽が誰に襲われたか知ってる?』


いきなりの質問に一瞬驚いたが、すぐ「ああ」と答えた。



『“アイツ”の狙いは、私と陽を引き離して―――…“私”を手に入れること』


「は、?」


私の言葉を聞いて彼は目をこれでもかってくらい見開いて驚いた。


それもそうだ


“アイツ”は私を手に入れるがために陽をあんな目に遭わせたんだから、


彼――谷口慎弥はまだ分かっていないみたいそんな彼に説明する。


『……“アイツ”は私が欲しいの。だから手入れるために陽をあんな目に遭わせた。“アイツ”は私の近くにいる人たちをすべて殺す。…陽は奇跡的に助かったんだよ、もし当たりどころが悪かったら、確実に死んでた』


「……」



『私を手に入れるためならどんな手段でも使う、そういう人なの。だから私はもう陽が傷つくのはみたくない。いくら好きでも愛していてもヨリを戻したくない』


戻せないんだ、失うのが怖いから

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