第76話

私の座っているソファの背もたれにいた圭は、膝を曲げ私と視線を合わせた。



「……あの時は本当にごめん」


茶色の目に一杯涙をため今にも零れ落ちてきそう。


スッと右手を伸ばし圭のふわふわな頭を撫でる。


『もういいよ。全然気にしてないから』


「でも圭だけでなく、俺等も結構言ってたよな」


『うん。大我には胸倉捕まれて投げ飛ばされたっけ?』


壮輔の言葉に昔の思い出を振り返る。


「な…っ!?あ、あれは投げ飛ばしてねえって!!」


「男と女には力の差があるんだよ」


確かに大我はあの時胸倉を掴んだ手を乱暴に放したからその拍子に私は倒れたんだ。



『私もあの時弱かったからね、だから皆に舐められたんだよ』


あの時の私は本当に弱かった。

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