第90話

「矢田くん、あの…」


紬は矢田に告白の返事をしようと声をかけると矢田は少し困った顔をするがすぐにいつもと同じように微笑む。


「うん、返事だよね」


「うん…

私は柊くんを好きだから矢田くんの気持ちに応えられないです。ごめんなさい」


頭を下げる紬の傍に行き、頭をポンポンと撫でる。


「返事してくれてありがとう


頑張ろうと思ったけど、柊くんが山本の事好きだってわかったら俺に勝ち目なんてないじゃん

だから、諦める事にした」


「矢田くん…」


顔を上げる頃には再び涙がボロボロと溢れる。


「俺の為に泣かなくていいから」


「好きになってくれてありがとう…矢田くん」


「うん、謝られるよりそっちの方がいいや」


最後の最後まで矢田は笑顔で紬を見つめる。


「じゃあ邪魔者は退散するから、後はお2人でごゆっくりー」


矢田はひらひらと手を振ってその場から離れる。

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