第69話

「言わない。言ったら…困らせるだけだし

兄貴にも悪いし」


言ってもいいのだろうか、悩んだけども紬はゆっくり静かに口を開く。


「柊くんのお兄さん、柊くんの気持ち知ってるよ」


真っ直ぐ前を見ていた千秋の顔は紬の方を見る。


「なんで解るの?」


「お兄さん、今日から私の高校の教育実習に来てて…朝たまたま会って話した時に聞いたの…

お兄さんも悩んでた。知ってるからこそ柊くんにどう接していいのか、結華さんと付き合ってる自分に罪悪感を感じてる所もあるみたいで、

本当にこのままずっといるの!?」


「それは…」


「柊くんだって、このままじゃダメだってわかってるんだよね。だから、同じ境遇の私の事も気にかけて嘘の恋愛にだって協力してくれたんでしょ?」


スっと紬は千秋に向けて手を伸ばす。


「今度は私が柊くんを助ける番

私は柊くんの優しさにとても助けて貰ったから…」

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