第64話

泣きそうなのを、ぐっと堪えて話を続ける紬。


「…でも、きっと柊さんはその人に告白はしないよ。関係を壊さないために一生その思いを隠すつもりだと思う…

だから、似たような境遇になった紬を助けて守りたいって思ってくれてたんじゃないの?」


「…わかってるけど

私はそんな同情は今はいらない」


「柊さんだって、その思いを断ち切ろうとしてるんじゃないの?」



莉多と別れて家に帰ると、映画の時から切っていた携帯の電源を入れる。


ピコンと1件新着メッセージが届いていた。


【今日は本当にごめん】


千秋からのメッセージだった。


「謝って欲しいわけじゃ…ないんだよ」


千秋のメッセージを返さず、そのまま携帯を放置して翌日を迎えた。


朝の駅から一緒の登校も気まずくて今日は避けようと家付近からバスで1駅先に行くことにした。


いつもの駅前もバスは通り、駅前で紬を待っているであろう千秋が携帯を見ながら立っていた。


【ごめん、今日日直だから先に行くね】


メッセージを1通送った。

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