第44話

「あのね、まつり…

私ね…」


ちらりとまつりの方を見れば真剣な顔ででも少し口角は上がっていてただ紬の目を見て頷いていた。それは"聞くよ"と言う姿勢だ。


「私も…本当は莉多を好きだったの…」


紬が本心を口にした瞬間、波の音も風の音もとてもクリアで時が止まったかのようだった。


「つむ…」


潤んだ瞳で紬の名前を口ずさもうとしたまつりを紬は遮る。


「だけどね!今は…もう幼なじみとしての好きとしかなくて…まつりに謝って欲しいとかそういうのは一切ないから」


「…わかった」


まつりが返答したのを確認すると紬は話を続ける。千秋と話したこと、お礼で嘘恋相手になっていること、遊園地で聞いた前から3人を知っていて紬の気持ちに気づいていたことも。


紬が話終えるまでまつりは、ひたすら頷いて話を聞いていた。

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