第38話

「紬?」


「ごめん、柊くんの事だよね?

そうだな…ヒーローみたいな人」


「え?ヒーロー?」


紬の現実味のない言葉に聞き直す。


「私が困っていたり、そばにいて欲しい時に来てくれたり欲しい言葉をくれる人」


紬は今までの千秋との出来事を振り返りながらゆっくりと莉多に話す。


「紬が困ってたりしたのを気づかなかった…」


莉多は右手で頭を抑えながら自分自身に呆れる。


「確かに柊さんなら、スマートにこなすだろうな」


「うん、あの人本当に何でも出来ちゃうから」


「紬は柊さんの事を本当に好きなんだな」


「うん、好きだよ…」


と紬が言いかけようとしたら、莉多が話を続ける。


「でもあの人は辞めた方が良いと思う」


「なんで?」


莉多に千秋を否定された紬は突然立ち止まる。


「だってモデルの仕事してたりするから慣れてるだけでしょ?そうじゃなくて、紬にはもっと…」


「…つけないで」


「紬?」


「モデルとか、芸能の仕事をしているのを何が悪いの!?勝手に莉多の思いを押し付けないで!」

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