第34話

観覧車から降りて、まつり達と合流する場所まで歩くも意識し始めてしまった紬は前みたいには中々話せない。


「山本さん。聞いてる?」


「は、はい!聞いてます…聞いていたんですけど…」


正直何も聞いてなかったとは言えない紬は、段々と声も小さくなる。


「聞いてなかったんだね」


「ごめんなさい…」


「いや、いいよ

大した話してなかったし」


左手を拳にして口元を押えながら千秋は紬をからかっているのか、笑う。


「今日、楽しかったな」


「うん、楽しかった…


また…」


"また一緒に何処か行こう"って言いかけて紬は咳払いをして無かったことにしようとしたが、千秋にはそんな小細工通用しなかった。


「何を言いかけたの?」


「聞こえてたよね?」


「んー?」


冗談っぽく笑う千秋を見て、紬は気づいていた事を確定した。


「…また、一緒に何処か行きたい…」


勇気を出して紬は下を向きながら言葉を発した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る