第12話

「紬?」


後ろから聞き覚えのある声が聞こえて振り返る。


「莉多」


「今帰り?さっさと帰ってなかった?」


「うん、ちょっとね」


「紬、さっき一緒にいたのって」


「え?」


紬に聞き返されて莉多は、それ以上何も聞かなかった。


「まつりは?」


「あー、まつり今日は塾があるからって地元まで帰った」


「そうなんだ」


紬はゆっくり歩き出し、その隣に莉多が来て一緒に帰る形になる。


「紬、気を使いすぎてね?」


「そんな事ないよ

付き合いたての2人を素直に祝福したいだけ」


「そっ?」


「うん、私は莉多もまつりの事も大切なだけ


だから莉多もまつりも私のことは気にしないでほしい」


「…わかった

ありがとうな、紬」


「うん」


— 莉多を好きだったことはもう、今日で終わりにする。無かったことにして綺麗さっぱり忘れるんだ。


「莉多、ありがとう」


「え?何が?」


「幼なじみとして一緒にいてくれて」


「こっちこそだよ。ありがとな、紬」


— 初めて好きになった人が莉多で後悔なんてしてないよ。ありがとう、莉多

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