第4話

「あ、俺の財布」


「良かったです。ホームの自動販売機に落ちてました」


紬は両手で男の人に財布を受け取り、男の人も両手で受け取る。


「ありがとうございます…」


2人で頭を下げ合い、紬が去ろうとしたら声をかけられる。


「待って」


「はい?」


「普通財布拾ってもらったらお礼するものだし、何かないですか?」


紬は一瞬固まって考えるが、特に思いつかず首を横に振る。


「それじゃあ俺の気が済まないんで


俺、窪高校2年の柊千秋っていいます

いつもこの時間にいるので何かあれば声掛けてください」


「えっ?いえいえ、本当に大丈夫なので…」


「俺の気が済まないので!」


意外と強引な千秋に紬はコクンっと頷く。


「わ、わかりました!


あの、私は白潤高校2年の山本紬です」


紬はぺこりと頭を下げて走って去っていく。

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