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「ただいま」


結局の所、親父はあの後また直ぐに仕事だと言って出て行った。

残された俺は外で待つ浪川に声をかけ、誰もいない部屋をもう一度眺めて、男の一人暮らしの部屋を出て来た。


きっと食事すらあの場所ではしていないだろう。


綺麗にとは程遠い古いマンションで今も引き払えずにあの場所に住むのは何の為なのか…

何故俺達とは住まないのか…


まだ愛人が居てそっちが大切だと言ってもらっていた方が諦めはついていたのに…


「お帰りなさいませ」


いつもの様に迎えてくれるのは梅さんだけだ…


兄様の部屋のドアを開け、定期的に掃除をされている整った部屋を見渡す。


何年も使われなくなった部屋はあの時のまま…


「お前はずっとここにいるのにな…」


当時兄様が気に入っていた物に触れる。きちんと座らされていたのが倒れたが、それを直すことはせず、抱えて部屋を出て来た。

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