※衝撃の事実 

8

衝撃的な事実を突きつけられてから、五分もしていないだろう。

俺達三人は、兄様の部屋に居た。

姉様は兄様のデスク椅子にもたれかかり、俺はベッドに寄りかかり、この部屋の主はベッドに膝を交え…いや、ピンクの物体を抱えて無言だ。


どれくらいそうしていただろうか、沈黙を破ったのは姉様だ。


「どうすんの?あっち行くの?私行かないからね」


そりゃそうだよね、姉様にしたら紅一点なわけで、いくら親父の子だからと言って嫌だよな。むしろ親父の子だから嫌だ。

それは俺も嫌だ。なぜ別邸に住まわなきゃなんねーんだよ!

せっかくカラオケの機材発注したってのに!

あっちじゃ、そんな場所ないのはわかっているし…


「あんたは、どうすんの?」


姉様は俺を“あんた”呼びだ。お前やら、おい!やらそんなのはいちいち気にはしていないが、これまたたまにカチンと来る時がある。


「俺も行かない」


「それじゃ、ここでのご飯はどうするの?」


俯いたまま兄様の言葉はやっと聞き取れるくらいだ。

なんでこう、メンタル弱いんだ?

本の数時間前ここでの兄様は普通であったはずなのに…


別邸にしばらく梅さんも行くと言う事になっている。

かと言って母屋をまるっとあけるわけにはいかないので、別邸用に誰か雇うらしいけど…


別邸と言っても同じ敷地内だ。父親の弟様が暮らしていた家だ。家の中は布団さえ持ち込めば直ぐに住める様にはなってはいる様だが、部屋数は人数分は無い。


姉様が一人部屋だとしても、俺は兄様と一緒になるだろうし…


「俺も…行きたくない」


俺達三人が出した答えは全員一致。

これは直ぐさま父親に言わなければならないのだけれど、誰も動こうとはしないのは、まだあの部屋にあの子らが居るからだ。

勿論父親もそこに居るだろう。


「…親父の事…俺は許さないから…」


それは、俺も姉様も同じだよ。

連れて来た四人のうち上双子は、兄様の一つ下で、姉様と同じ歳だった。


「やんなっちゃう…そんな話なんで今なの…」


姉様は、怒りを通り越して呆れている様だが、兄様は怒ると言うよりもショックが隠せていない。

俺もそりゃ色々思う事があるけれど、彼らに何の罪もない…

強引に連れて来られたんだろうしさ…

一番ちっさいのは怯えていた様にしか見えなかった。

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