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「あれ、梅さん、二人とも来てる?」


ピンクの物体を抱えて入って来た兄様は


「なんだ居たのか…」


その物体を丁寧に畳の上に置かれている座椅子に座らせている。



「はあ?なんでこんな物持ってくんの?」


お気に入りとは言っていたが、ちょっと、嫌、かなり邪魔なぬいぐるみを姉様は、手で払いのける様にしてみせた。

それをまた丁寧に座らせながら


「お前はここで待ってろよ」


話しかけている。

しかし、直ぐ様姉様に、ぽーいと放り投げられたので、俺はそれをつかみ仕方ないので、あぐらをかいた足の間に座らせてやった。

コップに飲物を入れてきた兄様は俺を見て


「貸すだけだから」


はいはい。


このキャラクターが出て来るゲームは割と家にもある。


テレビゲームは大画面でするに限るので、家族の共有部屋で唯一のフローリングの部屋はリビングだけだ。


そこに置かれた大画面のテレビで真っ正面に設置された横一直線のソファーにそれまた、横並びに座り行われるゲームは防音の部屋でもある。

大画面のテレビの両端にはこれまたデカイスピーカーも設置された。

この部屋は兄様が、たまーに下手くそなヴァイオリンなんかも弾いている様だが、最近はめっきり触っているのすら見ていない。


俺は楽器には興味は無いけれど、友達とカラオケボックスへ行ったのが楽しかったので、今機材を発注中だ。


ここでなら時間を気にする事無く順番も関係なく独りで歌えるから。

わりと歌唱力には自信はあるしね!

まだ100点は出せていないけれど…

次に友達とのカラオケは絶対100点を出すんだから、それまで特訓しなきゃだし!


念の為機材を発注する際に親父に一言断りを入れたのだが、その時


『お前達の母親は歌が上手かった』


始めて聞いた。


そんな事親父以外誰が知ってるって言うんだよ。


母の思い出話なんか話してくれた事なんて一度だって無かったのに!

そりゃそうだよね、次から次へと再婚離婚再婚離婚…

俺の知りうる限りでも…

あー!

数えらんねーし!

ただ言えるのは、俺達がその人達と会う事は無いと言う事。

写真くらいは見せて貰ったような気もするけどね…

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