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「ただいま!」


玄関の方から聞こえてきた、やたらとデカイ『ただいま』は、姉様だ。


なんだって、そんなに元気なのかと…

あっ!そうだ姉様にはまだ話してないんだ!

勢いよく起き上がり


「おーい!姉様!」


その後直ぐに、においを嗅ぎつけて来て、暖簾を上げてキッチンを覗き込んでいる。


「ただいま梅さん、今日の晩御飯なに?」


と、聞いているこの姉は梅さん大好きっ子だ。

まぁ、俺も梅さんが居ないと困るんだけどさ!


「で、あんた何か用?」


鞄とジャケットを畳の上に無造作に投げ置き、部屋を出て行ったと思ったら、また直ぐに戻って来た。


きっと手洗いうがいをしに行ったんだろう事は明白だが、つい最近までは梅さんに


『お嬢様先に手洗いうがいしてください!』


何時も言われてたんだからな。


「言いたい事あるなら、早くして!」


俺は喧嘩してる訳じゃ無いんだけど、まぁ捲し立てられるのは常なので、慣れっこになったが、たまにイラッとくる時もある。


「親父が話があるってよ」


「えー!また!どうせまた新しい嫁の話でもするんでしょ!」


言いながら、俺がさっき枕にしていたクッションを取り姉様が正座なんてするはず無いから、あぐらをかいた股の間に置き、ケータイをいじりながら肘置きにしている。


見てくれはそこそこモテるらしいし、実際彼氏と言う肩書きの輩はいるらしいが、これをみたらどう思うのか…


考えなくてもわかる答えは『さようなら』

だろうな!


外での姉様はどうやら、見た目だけのお嬢様を演じている様だし、きっと本性を知らない彼氏と言う可哀想な輩なんだろう。


お気の毒に…


この人の事だ長くは続かないのは目に見えてわかる。


そう言う俺は彼女なんてものは作らない事にしている。

別にモテないわけじゃない。

まぁ、兄様よりは俺の方が可愛らしいからさ!

どちらかと言えば年上から言われる事が多いから、断る事が中々難しいのも現状だが、そこは余計な事は言わず

『ごめんなさい』

しかない。


その点兄様は一目置かれているのか、言われた事が無いらしい。

俺にはそう言ってるだけなのかも知れないけど…

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