3

ダイニングと称した部屋は無駄に大きなテーブルが真ん中に置かれている。


映画の中のワンシーンにある様なヴァンパイアが出て来そうな洋館の一室とはかけ離れていて、ザ日本家屋である。

和室の一室で、正座をして食事をするのがこの家の決まり。


印刷であるだろう絵はテーブルにちょこんと飾れるサイズでここに必要?と思うが、これはお手伝いさんの梅さんの趣味らしい…

むしろ、木彫りの熊の置物の方が合っている気がする。


「なんだ、まだ誰も来てないのか…」


廊下を挟んでキッチンへと続く入口の暖簾をあげ覗き込んでみれば、梅さんが忙しそうに動いていた。


「梅さん何か手伝おうか?」


「謙信坊ちゃん、いえ大丈夫ですよ、直ぐにご用意致しますからもう少しお待ちください」


顔を上げてちゃんと返事をしてくれる梅さんの邪魔をしない様に自分のコップを食器棚から出し、冷蔵庫を開け水を注ぐ。


毎回思うんだけど、ウォーターサーバー買えば良いのにって思うけど、変なこだわりなのか、滅多に帰っても来ない家に親父はこのメーカーのこのペットボトルに入った物が良いらしい…


おかげで食品庫にはこれらが山になって積んである。

梅さんが重たそうに降ろしているのを何度か出くわして、危ないからと持ってあげたけど、怪我でもされたら家の食事は直ぐさまコンビニ弁当になってしまうので、それは勘弁願いたい。


「今日は坊ちゃんが好きなヒレカツを揚げますからね」


その辺の店で食べる物より梅さんの作るヒレカツの方が俺は好きだ。

揚げたてを食べさせてあげ様としてくれているのだ。


まだ来ていない三人を待つのはキッチンから続く梅さんがいつもいる六畳の和室。


基本俺達はここで食事を済ませる事の方が多い。

親父は滅多に家に帰っては来ないし、帰って来ていたとしても食事の時間一緒にならないのだから。

それに俺が高校へ上がってからは上二人共、一緒になる事は少なく、勝手がいいこの部屋の方が楽だからだ。


部屋にあるテレビをつけ夕方のニュースに目をやる。

同じ様なニュースばかり続いていてチャンネルを変えるも直ぐさま消してしまった。


手の届く所にあるクッションを引き寄せ、それを枕にして横になる。

制服のジャケットだけを脱ぎ、ワイシャツの上にはパーカーを羽織ってはいるが、空調の効いた室内で、ほんの少し肌寒いのはキッチンで換気扇を最大限で回しているのもあるのだろ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る