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「なんだ、居ないのか?」


謙信は姉様の部屋をノックし返事を待たずにドアを開けたが、この部屋の主は居ない。

ほんの少し入らなかった…いや、入れて貰えなかった部屋は妙に模様替えされていて、姉様らしくない部屋になっている。


「うゎ、何このレースのカーテン…」


どちらかと言えば、真っ黒の方が性格にはあってんじゃないのかと思うほど、家での姉様はツンツンしていて、近寄りがたい。

むしろ、万年反抗期女だ!


母親が居ないから仕方ないのか?

と、思わざる得ないが、そんな事は無い。

そもそもの性格が兄様と逆なんだよな…

何度も逆なら良かったのにと思った事がある。

そうすれば、この家の長男の威厳はあっただろうし、女らしく大人しく振る舞える姉になっていただろう…

と、改めてまた思うのだ。


「なんで、逆じゃなかったのかね…」


溜息一つで、全てが解決されるならそれに越したことはないが、そんな事今までの一度だってなかった。


俺は母親との記憶はほとんど無い。

上2人も覚えていないみたいだけれど、兄様は5歳だっただろうから、写真を見ればその頃の想い出が多少なりと出てくるらしいが…


姉様の部屋を出て、自分の部屋へ向かいながら子供の頃の写真を見返したくなり、部屋をあけるなり、本棚の奥に押しやったアルバムならぬ、フォトブックになった分厚く重たい、それを引っ張り出した。


本の少し色あせた表紙にはメモリーズと題され一枚の写真が載っている。


まだ赤ん坊の俺を横抱きにしているのは、写真でしか知らない母親だ。

彼女を中心に足元に兄様が、姉様は若かりし頃のまだ髪の毛がフサフサな父親に抱っこされている、唯一の家族写真。


その表紙をめくれば、まだ母親のお腹の中にいる時のエコーの画像から始まる。

それは、段々と人の形に形成されていった。

1ページに何枚もの写真が連なっている。

そして、次のページで産まれたばかりの俺の写真。

その後に病院で撮られたものだろう、写真がつづいていた。


夢中になって見ていたら、だいぶ暗くなり、明かりをつけなければ目を悪くするくらいの時間にはなってしまっていた。

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