第86話
辰巳さんにはお母さんがいない。
私にはお父さんがいない。
同じような環境で育ったはずなのにやはり違う。
私は1度も寂しいと思ったことが無いほど楽しくやってこれた。それはきっと真緒という弟の存在も大きかった。
だけど辰巳さんは?一人っ子の辰巳さんには分かち合える人はいなかったのだろう…
「家族をたくさん作りましょう!」
勢いよく放った言葉に一瞬、周りの音が聞こえない程静かになる空気。
「ぷはっ!いきなり何言ってんの?」
辰巳さんは、声を出して笑う。
「あのさ、茉佑。
ありがとな」
丁度信号が赤で停車した為、辰巳さんはハンドルに両手を置いて私の方を見る。
「茉佑と一緒にいると飽きないな」
その私を見る顔はとても優しくて、胸がキュンっとなる。
「辰巳さん、大好きです」
「知ってる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます