第63話

ポロポロと目から我慢していた涙がこぼれ落ちる。


「え…?やだっ、なんで涙出るの?」


ゆっくりとこぼれ落ちる涙を指で拭うがどんどんと出てくる。


「止まって…涙、止まって…」


このまま泣いちゃうと辰巳さんに泣いていたことがバレてしまう。


コンコンっと洗面所のドアを叩く音。


「茉佑?シャワーの音しないけど、どうした?掃除なら俺がやるよ」


タイミング悪ー!!こんな涙声で話せるほど回復してないし…


「茉佑?」


ガチャガチャとドアノブを開けようとする音が聞こえて、私は開かないようにドアノブを握る。


「だ、大丈夫です!ちょっと足の指をドアにぶつけて崩れてただけなので!」


「は!?大丈夫か?」


「本当に大丈夫なので!落ち着いたら掃除してリビングに戻るので」

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