第51話

辰巳さんが車から出ていった後ろ姿をただ見つめる。


大丈夫。辰巳さんは帰ってくる!

でもそんな簡単に婚約破棄とか出来るの?


そもそも私は、彼女のフリを頼まれた偽彼女だし…。


「…このまま私はどうしたいの?」


考え出したらキリがないこの思いをどこにぶつけたらいいんだろう…。


その時、携帯のバイブが鳴り慌てて名前を確認せずに電話に出る。


「もしもし」


『もしもし、茉佑?』


聞き覚えがある声…誰だっけ?

画面を離して表示されている名前を見る。


「新!?」


『おぅ!つーかお前俺って気づかずに電話出たのか?あぶねーな。非通知だったらどうすんだよ』


「あ…うん。

ってそれよりもどうしたの?いきなり」


『俺も仕事の転勤で都内に引っ越したんだけど、せっかくの日曜だし茉佑の家をお前の母さんに聞いてきたんだけどいねーから』


「えっ!?あー…」


ヤバい。バレたくない人にバレたかも…!

新はお母さんと仲がいい。

お母さんにバイトで偽彼女してるなんて知られたくないし…

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