第49話

「茉佑、お前どこ行ってたの?」


呆れた顔をする辰巳さん。


「…ごめんなさい。お父様に嘘彼女だってバレた」


「はっ!?

やっぱり無理だったかー…」


頭をガシガシと掻く辰巳さん。


「いやバレると思ったよ。俺も」


「え…えぇ!?じゃあ何でそんな…」


「とりあえず今日は帰ろう」


「はい…」


私は辰巳さんの隣を静かに歩き、そっと手を握る。


「もう彼女のフリはしなくていい…」


「私が、こうしたいんです!」


私が言い切ると、辰巳さんはそれ以上何も言わずに手を握り返す。


「はずっ」


「離してもいいんですよー」


「じゃあ」


「嘘!嘘です!」


私達がそう言い合いながら外に出て駐車場に行こうとした瞬間、


「辰巳」


と可愛らしい声が聞こえて、2人で声の方を見る。


「アリサ」


アリサさんって事は…辰巳さんの婚約者であり、緑川水産の社長令嬢!


凛と立つその姿は誰が見ても美女そのもので、自分が少し恥ずかしい。

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