第42話

「……はい」


「何ですか?今の間は」


「いや、なんか良いなって」


良いって呼び方が?


「変わってますね」


「おい、どういう意味だ?」


他愛もない話をする事で少しずつ緊張が解けていく。


「あんまり緊張するな…っても厳しいよな。

いつも通りの茉佑で良いから」


「はい、わかりました」


朝ごはんを食べ、支度をすると桜井さん…辰巳さんが運転する車に乗り込む。


車の中は終始無言だった。

きっと私よりも辰巳さんの方が緊張している。


「あの、お父様ってどんな…」


「無愛想で口数少ない父親」


「そ、そうですか…」


「でも、あんな人でも母親の事は大切にしていた」


赤信号で停車すると窓の外を見て呟く。


「お母様は…」


「俺が中3の時に病気で亡くなった」

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