第35話

「ダメだよー…これは恋じゃない…!

好きになっちゃダメだよ私!」


桜井さんの事を気になっているのは事実。

だからこそ早く家を出ないと、このまま一緒に住んでいたら気持ちが溢れそう。


しゃがんだまま下を向く。

塵一つない綺麗な床…


私が仕事から帰って掃除機かけているにしても、初めて来た時から時給を払うほど日常生活困っているように見えなかった。

桜井さん…何を考えているんだろう。


"アリサ"桜井さんが呼んだ婚約者さんの名前が頭の中で桜井さんの声で永遠ループする。


「はぁ…」


「茉佑、着替え終わった…ってどうした!?」


しゃがみ込んでいる私の傍に駆け寄って私の頭に触れる。


「何でもないですよ」


「そんな訳ないだろ!どうした?」


優しい桜井さん。

こんな関係になるまではただの鬼上司だと思っていたのに…。


「…ちょっと貧血で休んでただけです。

カレーは出来たのでよそいますね」


ゆっくり立ち上がって、鍋とお皿に向き合う。


「俺が後はやるから座ってな」


私の肩に手を置いてテキパキと動く。

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