第19話

マンションを出てから10分ぐらい歩いたところに大きなスーパーがあった。


桜井さんは、無言でカゴを手に取り私の横に立つ。


「あの…」


「カゴぐらい俺が持つ」


「ありがとうございます。


でもなんて言うかカゴ似合わないですね」


「久保は嫌味しか言えねーのか」


「すみません…。


色々やらかしてしまったお詫びに桜井さんが食べたいもの作らせてください!」


私の張り切りに引きつつも、上を向いて少し考えてから声を漏らす。


「ハンバーグ…とか」


「ハンバーグ、ですか?」


子恥ずかしそうに耳まで顔を真っ赤にしている桜井さんを見て吹き出す。


「おい!久保が聞いたんだろ、食べたいもの」


「いえ、そうなんですけど…!

想像していない物だったので」


「は?何想像してた?」


「んー、私が絶対食べないような洒落た料理、ですかね」


「俺も普通に食べねーよ」

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