第9話

「それはそうですけど…。

ん?婚約者!?」


「あぁ。お得意先の緑川水産のお嬢様だ」


「そうなんですか…」


— 上の人は上の人で色々大変なんだろうな。


「ひとまず、この家出て俺の家に住むといい。そうすれば家賃代浮くだろ?」


「確かに有難いですね…。

って!いやいや、有り得ないです!」


「せっかく慣れてきた仕事変えるのも嫌だろ?」


「それは…」


「とりあえずお袋さんの怪我が治るまではそうしたらどうだ?その後のことはそれから考えれば良いんじゃないか?」


— 桜井さんのご厚意に甘えるべき?

でも、部下の私と暮らして何のメリットもないよね。

だけど、この人の目を見ると嘘とか、冗談で言ってる訳じゃないって事がわかってしまう。


「桜井さん…あの、」

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