第80話

圭さんに続き私もお出かけの支度をして、落ち着いてから家を出る。


「お天気よくて良かったね」


「だな。普通に昼は公園で食べるか」


「うん」


「ん?楽しそうだな」


「楽しいよ!圭さんと一緒だし。

それに、なんかデートだけどピクニックみたい」


「あっそ」


圭さんは私の手を握ったまま、繋いでる方を自分のズボンのポケットに入れる。


「照れてます?」


「うるせっ」


小さな口喧嘩をしながら歩いていくと駅前に出来たばかりのショッピングモールに入る。


「何が欲しいの?」


「んー…」


キョロキョロと何かを探しながら歩く圭さん。

質問しても何も返してくれない…。


「なんか、こう一緒の物って今までなかったから」


「え?」


お洒落なキッチン用品とかが置いてあるお店の前に着くとグイッと引っ張られて店内に入る。


圭さんは色違いのマグカップを持つと、


「凪咲の前の家に行った時…光輝さんとお揃いとか…あったから…」


ボソッボソッと話した圭さんの言葉を私は聞き逃さなかった。


「あー!悪い!今のなし!俺らしくない…」


「一緒に同じもの買いましょ!」


私も圭さんと同じマグカップを手に取る。


「いや、いいって」


「嬉しいの。圭さんがそんな風に言ってくれるの…私の一方通行かと」


「一方通行?」


「私も欲しいって思ってた。

だけど、圭さんそういうのは恥ずかしいのかと思ってたから」


「いや、まぁ恥ずかしいけど。

凪咲となら関係ないというか…」

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