第65話

「…そうですよね。大切にしないとダメですよね」


光輝から貰った指輪を改めて見て納得する。

その横で圭さんが私の左手を握る。


「ただ、こっちにはしないでくれたらありがたいというか…嬉しいというか」


「左手…」


左手の薬指の意味を思い出して、顔を圭さんとは反対の方に向ける。


「いや、俺も早いなとかわかってるから!」


「そうじゃなくて…嬉しいです。

先の事を考えてくれていて」


私との未来のこと。

光輝を失った時は、もう恋なんて出来ないって思ってた。

誰かを好きになることは2度とないと思ってた。


でも、空っぽになった私の心を埋めるように傍にいてくれた人。

欲しい言葉をくれた人。

口は悪いし意地悪だけど、不器用なりにたくさんの愛をくれた人。


「もうちょっと先だけど、いつか言うから待ってて」


「楽しみにしています」


「あ、いや楽しみにしてなくていい。

そういうの苦手だから」


「んー。期待してます」


「アホ。じゃあ一生言わない」


圭さんは拗ねて遠い方を見る。

その姿が可愛くて、クスクス笑うと頭を叩かれてしまった。

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