第64話

「何その顔」


「突然過ぎて、びっくりして」


「悪かったな。手を出すの早くて」


圭さんは苦笑いをしながら私の頬を握って遊ぶ。


「ちょっ!?ふぇいさん(※圭さん)」


「仕方ねーじゃん。やっと凪咲に好きだとか付き合いたいとか言ってもらえたんだから」


「わー!」


声を大きくして立ち上がる。


「どうした?」


「恥ずかしいので言葉にしないでー!」


圭さんは座ったまま私の右手に触れる。


「そういや指輪は?」


「え?」


「だからいつも付けてる指輪。

光輝さんが最後にくれたんだろ?」


お昼の時に山口さんに言われてから、すぐに外してポーチに入れている。


「凪咲にとって大切な物だろ?つけとけよ」


予想とは違って全く気にしてない圭さん。


「あの…もしかしたら嫌かなって」


「あ?今更何言ってんだよ。

仮に俺が本当に気にしてる奴だったら、忘れられない人がいるままでいいからとか言わねーよ」


言われてみれば確かにそうだ。


「ちゃんとしとけ。そうじゃねーと、光輝さん可哀想だろ」


「うん…」


私はカバンからポーチを取りだして、指輪を見つけ右手の薬指にはめる。


「ん。そういうのも大事にしている凪咲がいい」

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