第61話

「ちょっ、山口さん…」


「そういや何も言葉にはしてねーかも」


百瀬さんは私を見て苦笑いする。


「いや、あの…」


「お待たせ致しました。鯖の味噌煮定食と生姜焼き定食ね。お兄さん達2人のはもうちょっと待ってね」


「ありがとうございます」


「お先にいただきます!」


山口さんと私はさっさと食べ始める。


「凪咲、夜一緒に帰らね?」


「う、うん」


ご飯を食べ終えると店内が混みあっていた為、山口さんと先にお会計をしてから店を出る。


「百瀬さん、今日改めて言ってくれるんじゃないですか?」


「そうかな?」


「そういえば、矢島さんはいつまでその婚約指輪着けるんですか?」


普段の癖で耳に髪をかけた瞬間、山口さんに言われて右手を見る。


私の右手の薬指には当たり前のように光輝からの最後の贈り物。


外せるわけが無い。だけど、確かに百瀬さんと付き合うなら着け続けるのは良くないと思う。


「あっ、違うんです!すみません!余計なことを言ってしまって…」


あわあわと山口さんは謝る。


「ううん、私もいつまでも着けてるのは良くないかなとか思ってたから。

指摘してくれてありがと」


「矢島さん…」


「変わりに何か買おうかなー」


「じゃあ、お揃いで買いませんか?友リング的な感じで!」


「いいかも、それ」

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