第56話

長瀬さんに聞かれ、1度唾を飲み込んでから長瀬さんの方を真っ直ぐみて答える。


「…はい。好きです」


「じゃあどうして百瀬くんに好きだって言わないの?両思いじゃない」


長瀬さんは、きょとんと顔で私を見ながらビールジョッキを口にする。


「私が百瀬さんと前の彼氏を同じように見ていたんだと思います…だけどこの前百瀬さんに言われたんです。

"俺は俺で光輝さんは光輝さん。別の人間なんだから違って当たり前だろって"


こんなに優しくて、温かい人はいないのではと思えるほど。だからこそちゃんと自分の中でけじめをつけてから言いたいんです。自分から好きだって」


「百瀬くん、優しいよね」


「そうですね」


「口は悪いけど」


「それは否定できませんね」


私と長瀬さんは、2人してクスクスと笑う。


「あー!スッキリした!」


「え?」


「あなたがまだ悩んでたり、ハッキリしないんだったらどんな手を使っても奪おうとか考えてたけど」


「うばっ!?」


「でも、思ってたよりもちゃんと百瀬くんの事考えてるし。出会った時も思ったけどいい子だもんあなたは」


「長瀬さん…」


「花梨で良いよ。それよりあなたの名前…」


「あ、矢島凪咲です」


「凪咲ちゃん、改めてよろしくね」


「はい!花梨さん」


ニコッと笑った花梨さんは、本当に綺麗で見とれてしまうほど。


「だってさ、後はお2人で仲良くやってね」


「えっ!?」

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