第55話

18時の定時。

上がって直ぐに長瀬さんに電話をして、指定された会社近くの居酒屋に入る。


待ち合わせで入ったらすぐに席に案内された。


「お疲れ様です」


「お疲れ様です。さっさと座ったら?」


「お邪魔します…」


長瀬さんにメニューを見せてもらう。


「好きなの頼んでちょうだい。ここは私が奢るから」


「えっ!?」


「半ば強引に誘ったからね」


自覚はあったんだ…。


「じゃあ、ハイボールと軟骨揚げでお願いします」


「そんだけ!?」


その後すぐに店員さんに注文して、頼んだものが少しずつ来る。


「とりあえず、お疲れ様です」


「お疲れ様です…」


コツンッとグラスを合わせて飲む。


「ってかさ!何なの!私の時はあんなに真剣になんなかった癖にさ」


「えっ?突然どうしたんですか?」


まだ一口しか飲んでいないはずのお酒。

長瀬さんは突然怒り出す。


「あなたの事よ!百瀬くん、自分が1番じゃなくても好きでいてくれればそれでいいって言ってた…。何それ!凄くあなたの事好きじゃない!?」


「えっと…」


「ごめんなさい。羨ましいの…あなたが」


さっきまで声を大にして言っていた長瀬さんは、しゅんっと今度は大人しく話す。


「でも、長瀬さんも付き合っていたんですよね?」


「高校生の時ね。

でもあの頃の百瀬くんとは違う。今みたいに真剣に好きだって言ってくれるような人じゃなかったし。

あなたも百瀬くんの事好きよね?」

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