第52話

~百瀬side


凪咲達と別れて、長瀬さんと藤原とエレベーターに乗り、3階の営業部フロアで降りる。


「資料とか持ってくるから待ってて」


「うん…」


長瀬さんに入口で待ってもらい、藤原とデスクに戻る。


「で、あちら誰?」


「高校の時の元カノ」


「元カノ!?」


藤原はチラチラと長瀬さんの方を見る。

その頭を俺は自分の方に向かせる。


「あほ。不自然だ」


「めっちゃ美人じゃん。いいの?より戻さなくて」


「あ?戻すわけないだろ」


「勿体ないなー。

ま、今のお前には矢島さんがいるもなー」


「うるせっ」


資料を持って長瀬さんの元へ戻ると、彼女はなんとも言えない表情で俺を待っていた。


「長瀬さん、何かありました?」


「百瀬くん、普通に喋ってよ」


「すみません。ここは職場であなたは取引相手なので出来ません」


「さっきの彼女には下の名前で呼んでたし、普通にしてたじゃない」


そりゃ凪咲は俺の特別だし。会ったら話したいし…。


「百瀬くん、さっきの子好きなの?」


「…だったら?長瀬さんには関係ないよね」


「…関係なくない…」


「はっ?」


俺と長瀬さんのやり取りを通りすがりの人たちが不思議そうに見ていた。


「とりあえずこっち来て」


使用中になっていない、会議室に入る。


「長瀬さん、本当に何なの?」


「…私、百瀬くんと別れた事後悔してるの!

だって百瀬くんいつも私と一緒にいても楽しくなさそうで。

でも久しぶりに会えたらやっぱり好きだなって…」


「俺あの時は、ちゃんと花梨の事好きだったよ」

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