第47話

ポツンッ


肩に雨が当たる。


「きゃっ!雨が…」


「マジかよ、タイミング悪いな」


そう言った百瀬さんはジャケットを脱ぎ私の頭から被せる。


「百瀬さん!?」


「このままだと風邪ひくだろ」


「そんな、百瀬さんが風邪ひいちゃうじゃないですか」


百瀬さんのスーツを外そうしたらそれを止められた。


「さっき、あんたの大切な人と約束したんだ。

あんたを守るって、それなのに早速風邪でも引かせたら話にならねーだろ」


「そんなの…」


私が言いかけた瞬間、怒っていたはずの彼に抱きしめられる。


「も、百瀬さん!?」


「好きだ…バカ」


抱きしめられた瞬間、百瀬さんの体温が心地良くて、心音が安心するような速度で…抱きしめ返そうと手を百瀬さんの背中に回そうとする。


だけど脳裏に光輝が現れる。


「…だめですよ。

私、そんな事言ってもらう資格ないです」


「なんで?」


百瀬さんは私から離れ、肩を掴む。

そして真っ直ぐに私を見る。


「だって私は、光輝の事がずっと好きで、だから似てる百瀬さんが好きなのか…どっちが好きとかわからないんです!」


私が言い切ると、百瀬さんに両頬を掴まれる。


「アホ」


「?」


「似てようが何だろうが所詮、俺は俺で光輝さんは光輝さん。違う人間なんだから一緒にするなよ。

別にいいよ、あんたの中にずっと光輝さんがいても。それをひっくるめて好きだから…凪咲」


いつもよりも優しい声にとくんっと胸が鳴った。

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