第24話

俺は多分彼女が心配するであろう後輩を藤原に任せ、自分のカバンと彼女のカバンと上着を持って元の場所に戻る。


「百瀬さん…」


「ほれ荷物」


「ありがとうございます…。

じゃなくて!山口さんは?」


「後輩なら藤原に任せといた」


「上司の人達は…!?」


「酔っ払って話し込んでたし、後のことは藤原がきっと上手くやるから」


こんな時でも後輩とか、上司とか、自分以外のこと考えるんだな。


「ほら、行くぞ」


グイッと彼女の腕を引っ張ると彼女は目を大きくして俺を見る。


「なに?」


「い、いえ。何も…」


彼女を立たせて店から出て駅に向かう。

その間一言も会話がなく気まずい空気が流れる。


どちらかというと俺もそんなに喋るようなタイプではないし、きっと彼女もそうだろう。


「えっと、矢島さんは…」


「さっきの、ごめんなさい!

あの強引さとか、そういうの似てて…固まってしまって…」


「あー」


だからさっき目を丸くして俺を見てたのか。

顔も似て、言動も似てたらそりゃ彼氏が生きてるように見えるのかもな。


「タクシー拾って帰るか」


俺は横から空車の点灯が付いたタクシーを止める。


「え!?ここからだとちょっと遠い…」


「送ってくし、あんたが良いなら聞かせろよ。

俺にそっくりな恋人の話を」


そのままタクシーに2人で入りドアが閉まる。

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