第23話

そういうつもりじゃない。

このままコイツを放っておくことはしてはいけない気がした。


このままだとコイツの心が壊れそうな…


「悪い、さっきあんたの過去知ってるやつがいて…聞いた」


「あー…はい」


「無理して答えなくていいんだけど。

警察官だったんだろ?」


「はい…

あの日、最期になった日は5年記念日でプロポーズしようとしてくれていたらしくて…。

この指輪がポケットに入ってたって言ってました」


大切にそうに指輪を触る彼女。

誰がどう見ても大切な物なんだとわかるような…。


「今も好きなのか?」


「はい、とても」


彼を亡くしても未だ好きでいられるコイツ、真っ直ぐで一途で、こちらが泣きそうになるぐらい純粋で綺麗だと思った。


「そろそろ戻らないとあのままの空気良くないですよね?」


あははーと苦笑いしながら立ち上がる彼女を再び座らせた。


「えっと…」


「帰んぞ」


「え!?」


「ちょっと待ってろ!カバン持ってくっから」


俺は彼女をそのまま座らせて走って席に戻るとズカズカと彼女が座っていた場所まで行く。


「あ、えっと…矢島のカバンってどれ?」


俺の言葉に困惑した後輩の女の子は「えっと、それです…あと、そこに掛かってるのが上着ですが…矢島さん、どうかしましたか!?」と聞いてきた。


「体調優れないっぽいから送ってそのまま俺も帰る。藤原、悪いけどこの子と一緒にいてやって」


「お、おぉ。わかった」

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