第22話

俺も後ろの席の女たちも何も言えなかった。

さっきの言葉を聞いて何て思ったか、感じたか…

ただそれが気になってしまった。


藤原の目の前に座っている彼女の後輩もあおい顔をしていたから、藤原が「大丈夫?」と聞く。


「…私何も知らなくて。

恋愛相談とかしてて…」


「知らなかったんだから仕方がねーじゃん。

言いたくなかったから話してなかっんだろうし。

だから、あんたはいつもと同じように接してあげればいいんじゃないの?

あいつ、あんたの事すごく可愛がってるように見えるし」


「はい…」


俺は立ち上がって彼女を追いかけて化粧室に向かうと彼女は待合席で手で顔を埋めて座っていた。


「大丈夫か?」


俺が声をかけるとビクッと肩を震わせて、ゆっくりと顔を上げる。その顔は泣いたのか、目の下が少し赤くなっていた。


「すみません、寝不足だったもので…」


あははーと笑って下手な嘘をつく彼女。

そんな事はお構い無しに隣の椅子に座る。


「戻らなくて良いんですか?」


「あんたの方が心配」


「え?」


「あんたっていろんな事抱えるタイプっしょ?だから近くで見てないと危なっかしい」


俺の言葉に彼女は苦笑いしながら「子供じゃないので大丈夫です」と答えた。

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