第14話
「えっ?」
棒付きの飴を舐めながらこちらを睨みつける顔。
面倒くさそうに、少し怒った声。
「光輝…」
「はっ?」
「あ、すみません。
昨日提出していただいた経費申請書不備がありまして…書き直して持ってきてください!」
申請書をデスクに置いて小走りでその場から立ち去る。後ろから「おい!」って声が聞こえたけど聞こえないふりをした。
私はそのまま近くの女性化粧室に入り、荒れた息を整える。
「はぁ…はぁ…」
びっくりするぐらい似ていた。
あんなに似ている人いる?
世界には自分と似ている人が3人はいるとか言うけど…それにしたって。
私は出来るだけ百瀬さんと関わらないようにしよう、そう決めたのに。
「お疲れ様です。さっきの…」
暫くすると経理部に百瀬さんが申請書を持ってやって来た。
「ごめん、山口さん。私の代わりに受け取っといてくれる?私ちょっとコピー室行ってくる」
「え?あ、はい!わかりました」
隣の席に座っている可愛い後輩の山口さんに受け取りを頼んで席をこそこそと離れる。
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