第6話

プルル、プルル…


「お願い!光輝、出て…」


プルル、プル…


『アホか!お前勤務中に電話してくんなや!!』


「光…」


『おかけになった電話番号はおでになりません』


さっきの光輝が怒鳴ったのは幻聴だった。

そう出て欲しいと思う私の、願いだった。


「どうして、出てくれないの?光輝…」


その場に携帯を握りしめて座り込む。


ブーブー…


携帯のバイブが鳴り、すぐに画面を開くと見知らぬ番号からだった。


震える指で応答のボタンを押して「もしもし」と出る。


『もしもし、矢島凪咲さんの携帯でお間違いないでしょうか?』


聞き覚えのない少し年上の男性の声。

その声は冷静そうに聞こえるが少し焦っているようにも思えた。


「矢島凪咲ですけど、あなたは?」


『工藤光輝の上司の平井です』


「えっ!?」


『先程とある事件に工藤くんが巻き込まれて今、成城総合病院に運ばれていまして、彼があなたの名前を呼んでいたので勝手ですが彼の携帯からあなたの番号を見つけたので掛けさせていただきました』


「刃物を持った男の人から子供を庇ったからですか?」


『ご存知でしたか?今すぐこちらに来れますか?』


「…畏まりました」


電話を切って直ぐに店長の元へ駆け寄り、事情を説明するとすぐに「行きなさい」と言ってくれたので、すぐに上着を羽織り、タクシーを捕まえて光輝が運ばれた病院まで行く。

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