宴会
「みんな、おかえりなさい。あら、帽子にしたのね、とっても似合っているわ」
池の宴会場まで帰ってくると、まずメアリーアンが出迎えてくれた。
池の中を泳ぐシンデレラと、蓮の葉の上で遊ぶハーモニーに、池の水で喉を潤すテレジア、その三匹に加えて。
平安貴族のお姫さまのような格好と髪型をした、メアリーアンと同じ大きさの人が、池のほとりにちょこんと座っている。
彼女が、今晩メアリーアンが酌をしている神様なのだろう。
お姫さまは君と目が合うと、にっこりと無邪気な微笑みを見せてくれた。
銀月宮もこっくり大臣も、彼女が居る事に特に言及しない。
ただ、やはり神様相手だからか、軽い会釈を交わしている。
兎達は二匹共君の肩から地上に降り立ち、メアリーアンの回りをくるくると走り回っている。
「メアリー、ただいま!」
「メアリー、お水ちょうだい!」
日卯女と朝兎丸の催促に、メアリーアンはくすりと笑って、池の水を竹筒の中へ吸い上げる。
一切手を触れてもいないのに、池から清らかな水が竹筒の中へ注がれていく。
竹筒がいっぱいになると、摘み取った蓮の葉を二枚持ってきて、そこに水を注いで兎達にやった。
二匹は喜びを表すように何度も高くジャンプして、ありがとうありがとう、とメアリーアンに言う。
「あなたも一緒にティータイムにする?」
ぽすんと座り込んだこっくり大臣が、懐から出したお猪口にメアリーが酒を注ぎながら、優しい声で君に尋ねた。
見れば、銀月宮は花の上に腰かけて目を閉じており。
さっきまで泳いでいたはずのシンデレラは、くじらの姿から少年の姿に変身して、笑顔で君の手を取っていた。
足元には、いつの間に移動してきたのかハーモニーが尻尾を君の足に纏わせ、小さな声で鳴いた。
「いいでしょ、ちょっとだけ休憩してきなよ。カワイイぼくと、もうちょっと一緒に居たいでしょ?」
少年の姿のシンデレラに手を引かれて、テレジアの隣に君も座る。
メアリーアンはいつの間に淹れてくれていたのか、深い香りの甘い紅茶を、人用のカップにいれて渡してくれた。
「今日はミルクティーよ。お口に合うといいのだけれど」
君は一口飲んで、その美味しさに瞳を輝かせてメアリーアンに頷いた。
「ふふ。ゆっくりして行ってね」
メアリーアンのお言葉に甘えて、君は少しこの池でのんびりする事にした。
話し相手はシンデレラにテレジアにお姫さままで、本当に沢山の言葉をお互いに交わす。
空に浮かぶ星々は、そんな君達の様子を見守るように、いつまでもいつまでも、輝き続けた。
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