第2話
暁音は沙霧がいなくなると、ふっと肩の力を抜いてリビングを見回した。あてもなくまじまじと全体を見ていた暁音は、ある一点を凝視して表情を固くした。
ゆっくりと立ち上がるとふらふらと壁に寄っていく。そっと手を伸ばして触れたのは額縁の中に飾られた、御空色の花がトゲのような葉に包まれたドライフラワーの花束。
目を細めて慈しむようにゆっくりと撫でる背中に、階段を下りてきた沙霧は足を止めた。沙霧は暁音の消えそうな横顔に見惚れ、視線が外せなかった。暁音は不意に振り向くと、沙霧の視線に気がついて手を下ろした。
「すみません、勝手に」
「い、いえ!」
二人の間に沈黙が流れる。
沙霧は目を泳がせながら考えて、暁音が見ていたドライフラワーに目を留めた。
「私はお花には詳しくないですが、このお花、とても綺麗ですよね」
沙霧が暁音の隣に足を進めながら零した軽やかに弾む声。暁音は沙霧の視線を追ってドライフラワーを見ると、視線を落として奥歯をかみ締めた。
「私はこの花が嫌いです」
暁音の苦々しい言葉から流れた微妙な空気に、二人はしばらく並んだままお互い黙り込んでいたが、暁音はパッと視線を逸らしてソファに浅く腰掛けた。
「すみません、プランの話でしたね」
沙霧は少し驚いた様子を見せたが、すぐに自分もソファに座った。二人は頭を突き合わせて二時間じっくりとプランについて話し合った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます