第2話 異なる世界に来た

転生神を見て、この世界に来た時の事を思い出す。



目が覚めたら真っ暗な場所にいた


スポットライトが照らすように三つの光が降り注ぎ、その中にそれぞれ人影が浮かぶ


「とりあえずアカネです」チャイナドレス姿の妖艶で美しいメリハリボディの美女

「今回はオメガとしておこう」パリッと綺麗にビジネススーツを着た人型の黒いモヤ

「僕はロンという事で」女子学生の制服を着た性別不明の小柄で美しい短髪


「「「神判へようこそ」」」

3つの声がハモる。


「あなたに罪はありませんわ、それを認める代わりに新しい世界で活躍していただきます」

「古い罪は新しい行動で上書きされる、上書きすれば罪は消えてポイだ」

「実際の所、異なる世界で君に大いに行動してもらいたい、そういうお話なのさ」


美女、スーツ、学生の順で語りかけられた。


「俺なんかやっちゃっていたのですか?」

仕事の誤魔化しや軽犯罪はたくさん身に覚えあるけど・・・


「生きることは罪ですわ、死ぬことも罪です。でもそれは自然の事なのです」

「考えることは罪であり、想像は創造の罪でもある。しかしそれは世界の理でもある」

「思いついちゃうのは仕方ないよね、リンゴが落ちるように頭の中も現象なのだから」


またアカネ、オメガ、ロンの順番で言葉が響く。


「厨二病っぽい想像をしたことがあるけど・・・」

異世界に行ったら凄い事が出来るとか、何か特別な能力とか考えたことあるけど、

そういうことを考えたからこうなったのかな?

 

「わたくしなら、あなたに栄光と富貴に満ちた欲望を満たす能力を持たせられます」

「俺なら、何者も逆らえず、何者でも従えられる知恵と力を得る事が出来る」

「僕の場合、何があっても絶対に終わらない、見捨てられない、溢れるような幸運と一緒なれるよ」


話す順番は変わらない、そういう仕組みなのだなと感じる。


「何か使命でもあるのか?それを果たすために力を?」

新世界で無敵無双が出来るってこと?

「それをさせる、君たちは神なのか?」


「ここを通っていく者たちはわたくしを女神と呼びます」

「最初は驚かれる事が多いが、去る時は俺様に歓喜して神の様にあがめるかな?たまに悪魔でもいいなんて言うやつもいるが」

「割と天使様とか御使いとか呼ばれるかな?僕に神様を見ているのはその通りだと思うよ」


「異世界転生を案内する使途とか異能?超越者? 」

何か選べば凄いことになりそうだけど神様にしては3人いるし、3人?3柱?

3人いるのは斬新かも


「わたくしたち三つが重なることは稀なのですけどね」

「お前さんはちょっと特別なのさ」

「なので、今回は選択肢を提示することになりました」


んー?微妙な違和感、

それを思ったとたん意識の中で何かがつながった


僕は人差し指をくるくる回しながら、虚空を指さして宣言する

「じゃああれを選ぶ」


3つの存在は笑ったような雰囲気で姿勢を正し闇の霧となって消え、スポットライトも消える。

その後真っ暗となり、一瞬あとに自分は荒野の真ん中に立ちすくんでいた。



自分の姿を見る、くたびれたスーツのまま。

ポケットをまさぐると中は空になっていた。

手を見ると今までのままだがちょっと血色がいい、腹を見ると変わらずぽよんと出ている。

いつもの気怠さや重さはなく全身はすっきりしている、気分爽快。


頭の中で繋がったアレを思い出して、右手の手のひらを出す。

「あんぱん」

そうイメージを投射すると手のひらにアンパンが出て来る。

たべる、うまい、いいパンだ。

食べ終わると今度は右手を、棒を持つように突き出して鉄パイプを念じる。

ふわっと鉄パイプが手に収まる。

鉄パイプで地面をガシガシつついてみる、いい鉄パイプだ。


アパートを思い出す、荒野の中、目の前に住み慣れたアパートが出現する。

自分の部屋に向かう、途中他の部屋を開けてみたがみんな空っぽだった。

自宅を開ける、自宅も空っぽだ。

玄関灯はつかない、水道は出る、トイレも流れる。


電気は繋がっていない。

水は屋上にタンクがある。

下水はその辺から出ていく。


全て想定通り、このアパートはこの世界で新たに出現させられた。


確信できた。


俺はこの世界を管理するルール、その物を扱う力を得た。

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