第1話 最初の冒険者、最初の説得

異世界の荒野にぽつんとたたずむアパート、

周囲は城壁より高い嵐の壁でぐるりと囲まれている。


そこにやってきたのは4名の冒険者。


大盾を持った戦士

やや軽装で細身の剣を持った剣士

皮ベースの鎧を着た探検家の様な人物、賢者?

明らかなローブをまとった魔導士


アパートの前で鉄パイプをもって、ワイシャツ姿で彼らの前に立つ。


「僕達も転移してきた、魔術使い以外の3人が転生者だ」

「力を貸して、私達と来て人々を助けて欲しい」


盾戦士と魔導士がそう語りかけて来る、

戦士に剣士、賢者の3名が転生者の様だ。


ここには調査に来た様だ、まあ怪しいからね。

俺を見つけて、風体から転生者とわかって勧誘してきた。

確かにこの世界にはワイシャツを着ている人はいない。


「余計な事をしたくないから構わないで欲しい、こんな格好だし大して役に立たないんじゃないか?」


諦めるよう説得するが、


「この人強いよ!」

賢者の言葉に彼らに緊張が走る、

信頼ある鑑識眼を持っているらしい。


「僕達の力も見てほしい、相応の実力があれば考えも変えてくれるんじゃないかな?」

盾戦士がそういうと彼らは装備を構えた。


こちらはワイシャツに鉄パイプ一本、

油断して欲しかったが全力で来るようだ。


「悪いけど俺、最強だから、ちゃんと諦めてもらうよ」


こちらに向かって軽剣士・・・高速の剣士が大地を蹴り、盾戦士が脇を固めながら連携してくる、

そして彼らの剣が間合いに届く直前に全方位から誘導弾。


賢者っぽいのが誘導弾幕、実体弾か?

魔道士が魔導弾連射。


それぞれ連携して同時弾着。

弾着の直後、前衛二名から剣戟の応酬。


こちらから見えた攻撃手順は

・前衛が地面を蹴る前に射撃準備

・突入する前衛2名がそれぞれ後衛2名の姿を一瞬遮った瞬間に全弾発射

・前衛の背後から花火のように広がる弾幕

・視覚情報を飽和し、前衛と弾幕どちらに対処するか一瞬混乱させる


すごい、並の相手ならこの一撃で倒せるだろう、

恐ろしく洗練された全方位オールレンジ強襲攻撃。


しかし全ての攻撃を光線技で迎撃、

俺は左手の指先から5本の光線を出し、頭上をくるりと回してて薙ぎ払う。


前衛は盾戦士が光線を受け流し間合いに入る、

襲い掛かる2人の剣戟を鉄パイプで受ける。


激しく響く武器の交差音。


高速剣士の連撃は切っ先で抉るような鋭い薙ぎ、

一撃でもあたれば手首ごと持っていかれそうだ。


盾戦士の斬撃は巧遅に見えて的確な打撃をしてくる、

高速剣士のリズムの合間に、間合いを庇うように打撃が入る。


隙をついて反撃するこちらの鉄パイプは盾戦士が受け流す、

こちらの攻撃は全て盾へ惹かれて吸われているように感じる。


永遠に感じる一瞬の中で交えられた干戈かんかの合間に再度誘導弾が来る、

わずかに間合いを取った瞬間に後衛から攻撃、息がぴったりだ。

今度の弾幕は全方位ではなく最短距離で強襲してくる。


本当に凄いな、ほとんどの相手ならこの波状攻撃であっという間に潰される。


凄いけど終わり。


再度誘導弾を光線技で迎撃しながら、地面から発生させた魔力っぽい鎖で全員の手足を拘束。

突然動けなくなり驚く冒険者たち。


「君らのレベルの高さに驚いた、でも俺ね、まじで強いの」

「見ていてね」


俺の冒険者ステータスを皆に見えるよう表示してから、左腕を掲げる。

瞬間、上空に数千発の火球弾が出現、同時に俺の冒険者レベルが4桁を超える。

唖然とする冒険者たち。


「うそ、さっき鑑定したときはレベル70くらいだったはず」

思わず賢者が言い放つ。


「これ撃ったらどうなるかわかるね?力の差は理解できたと思う」

「話は聞くから矛を収めて言う事に従って欲しい」


通常ファイヤーボールと呼ばれる、打ち込めば焼夷弾の如く高温で炸裂する火球弾、

並みの魔導士なら数発で必殺技扱いだが、あの数を撃ちこめば都市ごと蒸発できる。


冒険者だからこそわかる脅威、

こちらの言葉に彼らは構えを落とし、殺気が消える。


火球をキャンセルしながら拘束を解く。


「さて何か食べながらお話しようか」

そう言ってアパートに案内する。


アパートに作ってあったカフェスペースに入ると・・・先客がいた。


「お話は終わりましたの?」

メイドが声をかけて来る。


「あらおかえり」

グラスを掲げるチャイナドレスの美女。


「お邪魔している」

缶ビールを持つスーツを着た黒いモヤ。


「あれ、懐かしい顔がいるね。」

ストローから口を離した小柄な女学生。


君たちなんでいるの?

うちのメイドが、3名の転生神達をもてなしていた。

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