16-5

私が最初についたその常連さんは、ナンバー1の子を指名していた。

その子はいつも忙しく、いい加減放置も慣れて来たと言う。



『でも…それだけ放置になっちゃっても、それでもその子に会いたくて来て下さるんですよね?』


「う~ん…まぁそうやね」


『すごいな…そんな風になりたいですね』


「今日初日やろ?まだまだこれからやん!頑張って!」


『ありがとうございます』



そんな会話をしていたら、ダウンタイム。

照明が暗くなり、この時はお客さんの膝に乗らなきゃならない。



『私が乗せてもらって大丈夫ですか…』


「うん、どうせダウンタイム中に戻ってこんし。ここのボーイ本当女の子の付け回しが下手 笑」


『なんかすみません…』



そして私はミュールを脱ぎ、向かい合わせで客の膝にまたがった。



『なんか恥ずかしいですね…』


「最初はそうやろうね」



そのまま、客とキスをした。


何やってんだろ私…そんな気分が、一瞬よぎった。

テンション上げなきゃ…



結局その客とはキスだけで、胸はほとんど触られなかった。

好みじゃないのかもしれない。


ナンバー嬢と比べたら、そりゃそうだよね…

なんとなく凹んだ様な、変な気分。


すると、客が言った。



「まだシラフ?」


『シラフですよ~!最初のお客様ですから』


「え!俺が初?!じゃあ乾杯しよう!何か飲も!」


『いいんですか?』


「いいよ!!」



そしてそれから、結構飲んだと思う。


多分このお客さん、かなりヤケになっていた。

ただのヘルプの私に、ガンガンドリンク出してくれて…



最初に少しついただけだという、その客の指名嬢。

結局私は時間間際までこの席にいて、送りだけを指名嬢がする様な感じになってしまっていた。


自分の意志で席を渡り歩けるわけじゃないとはいえ、何だか申し訳ない気持ちになった。

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